選挙の当選確実の仕組みは?誤報や間違いでひっくり返ることはあるのか調べてみた
テレビで選挙番組を見ていると、画面の端っこに開票経過がテロップで表示されます。
今回、僕が気になったのは「開票率1%で当選確実」の速報。
いや、開票率1%で当選確実!は幾らなんでもフライングし過ぎでは?
1%しか開票していないのに、当選が確実かどうかなんて分からないでしょ。
というわけで、選挙速報の「当選確実」が出る仕組み。
そしてこの当選確実が実は間違えで、結果がひっくり返ったことはあるのか?について調べてみました。
【先に結論】
・テレビ局は様々な調査のデータから、統計学を用いて当選確実を出しています。
・過去には当選確実の誤報により、万歳→落選という候補者もいました。
Contents
開票率0%や1%でも当選確実が出る仕組み
なぜ開票率がたったの1%なのに、当選確実と言い切れるのでしょうか?
中には「開票率0%で当選確実」って言うのもありますよね?
開票していないのに当選確実って、さすがにこれは他の候補に失礼だと思います。
実は、テレビ局が当選確実を出す仕組みはこうです。
事前の調査で支持率を調べている
まずテレビ局は、選挙の事前調査をします。
選挙の「電話調査」ってかかって来たことありますか?
「今度の知事選挙ですが、誰に投票予定ですか?」って、電話で聞いて来るアンケートみたいなアレです。
これはもちろん、無作為で選んだお宅にかけています。
この電話調査以外にも、組織票や候補者の知名度、選挙事務所への取材、過去の実績など様々なデータを集めています。
中には「こんなものまで?」っていうデータも使うみたいですよ。
でもこうした選挙前の世論調査で、テレビ局はおおよその支持率や投票率などを把握・予想しています。
ただ、調査したすべての人が投票に行くとは限りません。
だから、投票当日にも調査を行うのです。
投票所の出口調査で予想している
「出口調査」に遭遇したことはありますか?
これはテレビや新聞の各メディアが、投票所の出口で待ち伏せして無作為に「誰に投票しましたか?」って聞く調査方法です。
有権者が本当のことを言っているかはともかく、事前調査に比べればアテになりそうな取材データですよね。
この出口調査を集計して、テレビなどは得票率を予想しているのです。
ちなみに期日前投票にも、出口調査は行われています。
開票作業を見て得票数を数える
そして出口調査が終わった後にも、テレビ局の当選予想は続きます。
投票日の当日夜8時に投票は締め切られ、その後、選挙管理委員会の人の手により投票用紙が1枚1枚仕分けされて行きます。
テレビ局の担当者は、それを双眼鏡でジッと見つめているのです。
「開票作業を見る?」って思うかもしれませんが、選挙の開票作業を見学できるって知ってましたか?
「開かれた選挙」でなければならないので、開票作業を見ることができます。
今はYouTubeで中継している人もいますよね。
もちろん開票作業の近くには行けませんが、例えば体育館なら2階から見学ができます。
そうです。
その開票作業を双眼鏡で見て、各候補の得票数を数えるのです。
得票ごとに投票用紙が「山」に仕分けられるので、それを数えればおおよその大勢が分かります。
事前調査は気変わりする可能性があり、出口調査はウソを言っている可能性があります。
でも、開票作業は見たそのままが得票なので、原始的なやり方ではありますが一番信頼できるデータなんです。
余談ですが、見学者が多ければ不正をしにくい環境づくりにもなります。
外国では「選挙は無効だ!選管が不正をしている!」といった暴動も起こっていますからね。
選挙は民主主義の根幹ですから、開票作業がオープンにされていれば安心できます。
開票所見学に来た。開票作業してみたいな。 pic.twitter.com/gnEO86VaI1
— 西村まさゆき (@tokyo26) October 22, 2017
統計学で当確を判断している
こうして集めた様々なデータを元に、テレビ局は当落の判断をします。
「いくら事前調査や開票作業を見ても、それだけでは当選確実は分からないのでは?」
と思うかもしれません。
そこで統計学を用いるのです。
統計学を簡単に説明しましょう。
とある選挙で、有権者が1万人だとします。
この選挙で当選予想をする場合、1万人すべての投票結果を調べる必要はありません。
1万人のうちの100人ぐらいを調べれば、全体の動向がおおよそ分かります。
もちろん、これには無作為でのデータ収集が重要となってきますので、出口調査などは年齢や性別などが偏らないように気を付けます。
仮に主婦ばかりに調査したら、無作為とは言えませんよね?
主婦層に支持される候補者に有利な調査結果だけが集まってしまっては、推定結果に大きな誤差が生じて信頼度が下がってしまいます。
このように統計学では、無作為に一部を調査することにより全体の傾向を推定します。
これが開票率1%で当選確実が出せる仕組みです。
秋山仁の開票率5%で当確の話
ちょうど立川志の輔のマクラより、あの数学者で有名な秋山仁先生の言葉という物を見つけました。
開票率5%で当確なんておかしい!と数学者・秋山仁さんと話したら、
「それが統計学ですよ」
「まだ開票率5%なのに?」
「あなたね。味噌汁作って味見するのに、丼鉢(どんぶりばち)でグーッと飲む?」
「…小皿で味見しますよね」
「それが5%よ」
なるほど!これはすごい分かりやすい!
さすがは数学者、秋山先生。
と言うわけで、開票率が100%でなくてもおおよそ全体が分かるのです。
当確はメディア・開票率は選管
統計学で全体の投票傾向を推測しているのは分かりました。
でも開票率1%は、さすがにムリがあるのでは?
しかも開票率0%は、全く投票結果が分からない状態なわけで、推定のやりようがない気もしますが…。
この仕組みも調べてみました。
実は「開票率」とは、選挙管理委員会が正式に発表するものです。
これに対し「当選確実」は、各メディアが独自の判断で発表するものです。
つまり「開票率」と「当選確実」は、全く別物ということなんですね。
先ほどの開票作業ですが、初めは手作業で数えますが、不正や間違えのないように更に機械でも数えます。
その後、いくつものチェックを経て、ようやく正式な「開票扱い」になります。
テレビ局が数えている「山」になっているだけの投票用紙は、まだ正式な「開票」とは言えません。
つまり、開票率には反映されていないわけです。
なので、どうしても選挙管理委員会からの「開票率」の発表は、メディアの予想よりも遅くなってしまうのです。
まとめると…
メディアは「山」や事前・出口調査で得票率を予測して、統計学を元に当選確実を出します。
対して開票率は、選管がキッチリ数えてから公式として発表します。(統計学などで推測はしません)
なので、どうしてもここに両者の差が生じてしまうのです。
「開票率1%で当選確実」とは、
「選管の公式発表の開票率1%だけど、我々テレビ局の独自調査では当選確実なんです!」
という意味になります。
当確が誤報で結果がひっくり返った事例
統計学はあくまで推定。
100%確実なものではありません。
味噌汁だって偶然に味噌の塊があれば、そこだけ味が濃くなります。
では、過去に「〇〇候補、当選確実!」と速報したけど、
「スミマセン。先ほどの当確は間違ってました、誤報です」
と言うことはないのでしょうか?
調べてみたら、実際に過去に誤報があった例を見つけました。
14年衆院選の当確誤報は6件
14日投開票があった衆院選のテレビ報道について、高市早苗総務相は12月19日の定例記者会見で、当確報道の誤報が6件あったことを明らかにした。
これまで明らかになっているのはNHK、テレビ朝日、TBSの3件。総務省の担当者によると、「他の3件はローカル局。任意で放送事業者から報告を受けているため、具体的には明らかにできない」という。
各紙報道などによると、NHKは東京21区で民主前職の長島昭久氏を「当選確実」と誤報(長島氏は比例復活)。テレビ朝日は山形2区の民主前職の近藤洋介氏を誤って当確と表示(近藤氏も比例復活)。TBSは比例東海ブロックの自民前職、東郷哲也氏を当確と表示したが、東郷氏は落選した
引用元:GooHoo http://gohoo.org/14122001/
大分は岩屋毅先生が93年選挙で当確誤報をされているので、何が起きてもおかしくないと思っている。
— 北風寒衛門 (@leppamania) July 21, 2019
誤報6件って、結構多くない?
当選報道された本人は万歳までして、その後に落選…。
結局、各メディアが視聴率を争うために、こうした当確誤報が生まれるのではないでしょうか?
ちなみに選挙速報の誤報は、これら以外にもまだまだ他にもたくさんあります。
「当選確実をホームページにまで記載したけど間違えだった」
とか、
間違って「落選」と報道して実は当選、とか結構あります。
だから選挙の候補者側は、最近は民放ではなくNHKの発表を待つみたいですね。
NHKは莫大な選挙データを持っているみたいで、民放よりも信頼性が高いとか…って、上の記事ではNHKも誤報してるじゃん(笑)
【まとめ】当選確実はテレビ局ごとに違いがある
最後にまとめると…
「当選確実」は、各メディアの独自取材による判断の結果です。
だからよく見ると、各テレビ局ごとに「当選確実」の報道に違いがあります。
早ければ視聴率も稼げますので、ここは各メディアの勝負所なんです。
対して「開票率」は、選挙管理委員会の正式な発表です。
集計するのは、かなりの時間がかかります。
夜20時に投票を締め切って、開票作業がすべて終わるのは日付が変わる頃…ってこともあります。
開票率と当選確実は根拠となるデータが別物なんですが、これを一緒にするので「何で開票率1%で当選確実?」って疑問に思うのです。
そう言えば、得票数2位の人が「当選確実」ってパターンもありますよね。
1位はまだ当確出ていないのに、なぜか2位が当選確実っていうパターン。
これもきっと統計学なんでしょう。
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