アルミニウム(粉末)が水と反応すると爆発する原因を調べてみた
2018年、岡山県のアルミ工場で大きな爆発事故がありました。
原因は、原材料に雨水が流れ込んで化学反応したとか・・・?
「え?アルミと水で爆発するの?」
こんな疑問が浮かびますよね。
と言うわけで、岡山のアルミ工業が爆発したニュースを元に、アルミと水との化学反応について調べてみました。
先に結論をまとめると・・・
・高温のアルミニウムに雨水が混ざると、水蒸気爆発を起こす可能性があります。
・アルミニウム粉が水に触れると、金属粉塵(ふんじん)爆発を起こす可能性もあります。
Contents
高温のアルミニウムに水が混ざると水蒸気爆発を起こす
アルミが水と化学反応起こして爆発するのなら、缶ジュースやアルミサッシは怖くて買えません。
でも、現実にはそんなことはないですよね。
まず、金属であるアルミニウムが溶ける温度は約660度。
融点ってやつですね。
で、岡山の工場ではアルミニウムの溶解炉に雨水が浸水して、水蒸気爆発を起こしたのが原因ではないか?と報道されています。
溶解炉ですから、中には高温になって溶けたアルミニウムが入っており、そこに水が混ざって水蒸気爆発したわけです。
水蒸気爆発について簡単に説明すると…
高温の金属と低温の水とが接触する(混ざる)と、水が一気に熱せられて水蒸気となり、その時に爆発したかのような大きなエネルギーが発生します。
このエネルギーの威力は凄まじく、工場の建物などを破壊するほど強力です。
・・・本当にカンタンですが、これが水蒸気爆発の仕組みです。
※本当は「蒸気膜」とか「圧力波」とか書いてありましたけど、小難しいそうなので見なかったことにしました。
「火もガスもないのに、本当に水だけで爆発が起こるの?」って思いますよね?
でも、金属の精錬工場や鋳造工場・化学工場では、もう何十年も前からこの水蒸気爆発による事故がたびたび起こっているのです。
ちょうど、アルミニウムの事故の例があったので紹介しますね。
1984年
富山県のアルミニウム鋳造工場にて、溶解炉に雨水を含んだアルミニウムを入れてしまい、水蒸気爆発が起こっています。
この場合の高温の物質は「熔融アルミニウム」で、低温の物質は「水」です。
1990年
山形県の廃品処理回収工場にて、火災消化中に溶けたアルミニウムと放水した水が反応して、同じく水蒸気爆発が起こっています。
この場合も「熔融アルミニウム」と「水」ですね。
この他にも、原子炉の燃料や熔解マンガン・鋳鉄に水が混ざって水蒸気爆発を起こした例がいくつかあります。
こう考えると、アルミニウムが危ないのではなくて水が危ないってことですね。
現在の総社市の朝日アルミ産業
アルミ工場爆発現場です pic.twitter.com/wX62QoZtTa— 坂本駅 (@00001V) July 29, 2018
火山の噴火でも水蒸気爆発が起こっている
そう言えば、火山の噴火も「水蒸気爆発」って言いますよね。
あんなデカイ岩石を空高く吹き飛ばすんですから、水蒸気爆発って相当なエネルギーです。
もちろんこの水蒸気爆発は、約1,000度にもなる高温のマグマに水が一気に熱せられたことが原因です。
天ぷら火災に水を掛けると水蒸気爆発を起こす
天ぷら火災で一番やってはいけないのが、水を掛けて消化しようとすること。
高温になった油に水を掛けると、逆に炎が大きくなって危険だからです。
これも、水が急激に熱せられたことによる水蒸気爆発が原因ですね。
ちなみに、天ぷら火災の時の油の温度は約300度ぐらいです。
先ほどの溶解アルミニウムが約660度ですから、いかに溶けたアルミニウムに雨水が混ざるのがヤバいのかが分かります。
水は水蒸気になると体積が1,700倍にもなる
水を急激に熱して気化させると体積が一気に増大し、高温・高圧の水蒸気が発生して爆発します。
水って水蒸気になると、体積が約1,700倍にもなりますからね。
少量の水ならまだしも、何トンもある溶解炉のアルミニウムに大量の雨水が混ざって反応すれば、常識では想像できない規模の水蒸気爆発が起こるのです。
アルミニウム粉末に水が反応して粉塵爆発を起こす可能性がある
水蒸気爆発以外にも、アルミニウムと水が反応して爆発するケースがあります。
それは、アルミニウム粉末による粉塵爆発です。
アルミニウムは、金属の中でも燃焼熱が大きい物質です。
燃やした時の発熱量が、大きいと言うことですね。
アルミニウム粉末とは、アルミニウムを削った時に出る金属粉なんですが、実はこの粉末は可燃物になります。
※消防法では、危険物に指定されています。
身近な金属であるアルミニウムの粉が、実は可燃物とか危険物なんです。
で、このアルミニウム粉末は、粉末であるぶん表面積が大きいので、それだけ空気に触れやすく酸化しやすいです。
この酸化しやすい状態のところに水が触れると、化学反応を起こしてなんと水素が発生します。
水素って聞くと、もう爆発するイメージしかありませんよね。
水以外でもお酢とかアルコールでも酸化しますので、同じく粉塵爆発を起こします。
アルミニウム粉末の火災の時に、水を消火に使ってしまうとかえって逆効果になるのです。
金属粉の粉塵爆発のやばさっていうのは、粉みたいな状態の金属は容易に空気中の酸素と結びつきやすくって、急速に酸化→発熱→発火なんてことになる
特に空気に触れただけで容易に酸化進行するアルミとかチタンの粉塵は法律で危険物に指定されてんじゃないかな— 王子17歳の憂鬱 (@immoral__prince) November 27, 2019
あ、そうそう。
小麦粉やおが屑でも、粉塵爆発が起こります。
【粉塵爆発】
小麦粉や砂糖などは有機物だけど、火を直接つけても燃えないんだ
けど小麦粉の湿気を飛ばしたり、砂糖をすって粉末にして火に吹きかけると、粉と粉の間に空気が入り、火炎放射器のように火がつくよ!
これが原因で度々事故にも…pic.twitter.com/zwfbcxbmbj— 実験たん (@Experiment_tan) September 12, 2020
この粉塵爆発が起こる仕組みを、簡単に説明します。
粉塵爆発に必要なものは3つ。
・粉塵雲
・酸素
・着火元
この粉塵に、何かの拍子で火が付きます。
そうすると、その燃焼が次々と周りの粉塵に移っていくのです。
これを伝播と言います。
でもこの粉塵どうしの間隔が、離れすぎていると燃焼が伝播しないので爆発は起こりません。
逆に間隔が近すぎても酸素不足になってしまうので、これも爆発はしません。
次々に伝播していく間隔、このちょうどよい粉塵を粉塵雲と言います。
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